いつもの
駅前の交差点
いつものように
彼女は
杖を握り
真っ直ぐ
前を見ている
信号が変わる
動き出さない彼女
あっ
街宣車が流す音に
車の流れの音が
人の流れが
わからないのかな
そう思って
「信号変わりましたよ
何かお手伝いできることありますか」
初めて聞いた
彼女の声
「ありがとう
でも、私は大丈夫です
貴女のことをしてください」
そう
人のお世話より
自分が自分になにをしているのか
なにをしようとしているのか
つえなきみ
ひろがりしみち
はてなきて
かげろうのごとく
ゆらりといっぽ
杖無き身
拡がりし道程
果てなきて
陽炎のごとく
ゆらりと一歩
クリスマスの
喧騒が遠退き
新しい年の
足音が聞こえてくる
見上げて
今日の空を
誰にとっても
怒涛の一年
あんなこと
そんなことは
過去のことと
清浄な空が
広がっていく
そらがある
このこころにも
またきょうも
はてなきそらに
われただよいて
空がある
この心にも
また今日も
果てなき宙に
吾漂いて